東京、夜行バスを待つ夜に。

8ヵ月に渡る手製本の製作の終わりが見え、新しい写真集の出版の目処がついてきた中、ようやく新たな撮影の為のリサーチと、発表の為の動き出しが始まった。本を読み、企画書を書き、コンタクトをとる。夜行バスに乗り、東京へ向かう。(なぜか先月あたりから、夜行バスに乗るのが精神的に辛くなってきた。新幹線で行きたいと心から思いつつ、まだそんな身分ではないと自制する。)バスの消灯時間まで、Amazonで届いたばかりの本を読み始めた。第二次世界大戦中にタイからミャンマーまでを線路で結ぼうとした日本軍の計画。多くの人間がその建設の為に犠牲になり「Death Railway」と呼ばれた。そこで医療従事者の立場で捕虜となった若きイギリス兵の壮絶な3年間を記録した手記。

何千、何万という捕虜が死んでいったという記録を前に、私は酷く後ろめたさを感じる。それは、かつて日本人がその残虐な行為を行ったという事実を、そこまで深刻に受け止めることの出来ない自分自身に対する後ろめたさだ。私は、その行為の重さを実感として認識出来ていない。私はまだ、その実感の遥か遠くにいる。知識を得るだけでは足りないことを改めて認識する。今年の3月、シンガポールの華僑虐殺の場所を訪れた時もそうだった。私は1mmも近づけた気がしない。私は、自分自身の、その鈍感さに幻滅する。

自分自身の中で何かを掴み取るまで、何を撮影しても、おそらく何の意味もなさない。綺麗な写真であろうが、何であろうが、意味の無い、ただのデータだ。しかし、それは必要不可欠な無駄な行為である。

実りある2日間だった。一つずつ、目の前の課題を解決していきながら、ゆっくりであるが、前に進んでいる。来月は、マレーシアとシンガポールだ。日本軍が進軍したルートを出来る限りトレースし、人の話を沢山聞きたい。

コメント

人気の投稿