チューリッヒにて

6日間のサン=ブリユーの滞在を終え、昨晩チューリッヒ入りした。大陸の北から吹き付ける風は大西洋から東へ東へと列車に揺られてきた僕の体に冷たく突き刺さる。日本出国直前に防寒着を買ってこなかったら、間違いなく体調を壊す寒さだ。これからアサインメントの打ち合せの為、昨晩お世話になった知人の家からホテルへと向かわなければいけない。あと1時間だけ、高すぎるスタバのコーヒー(サンドイッチとカフェラテで約2000円)とともにこの六日間の余韻に少しだけ浸ろうと思う。

ボランティア、子ども、教育
サン=ブリユーの滞在は間違いなく素晴らしいものだった。フェスティバルに展示として参加すること自体、僕には目新しい経験な訳だけれど、本当に素晴らしい出会いが沢山会った。その一つとしてあげられるのはボランティアの方達との出会いである。このフェスティバル自体が低予算で運営されているため、多くの運営はボランティア市民によって成り立っている。展示設営から始まり、物販、そして、最も大切なのは写真展の内容を来場者に説明するということ。まず、参加写真家たちの一番最初の仕事は、そのボランティアの人達に自分たちの作品を説明するということだった。10名の写真家と約30名程のボランティアが一団となって、会場を巡っていく。写真家たちは自分たちの変わりとなって説明してくれるボランティアの人達への説明は熱心に行いながら、自分たちの熱を伝えていく。ボランティアからは沢山の質問が投げかけられる。いささか、伝えるのが複雑な僕の展示に対しても、沢山の質問が寄せられたとともに、この部分が分からなかったからと、翌日、そのまた翌日にと自分の時間を見つけて質問をしにきてくれた。日本に親しみが深いというある夫婦に至っては、最期に通訳を手伝ってくれた時には、展示内容と日本の宗教感等を交えて来場者に説明してくれるなど、頼もしい限りだった。

そして、もう一つの貴重な機会は子どもたちへのプレゼンである。2日間を通して7、80人ぐらいの子どもたちにプレゼンを行った。先生たちは、事前にフェスティバルを訪れ、事前学習では分からなかった点について、質問に来てくれた。当日、直接日本人を見るのが珍しいのか、なにやらニヤニヤしながら12、3歳ぐらいの子どもたちが僕の展示室に入ってきた。とても感銘を受けたのが、僕のプレゼンに対して、皆真剣に質問をなげかけてくれたこと、そして、先生たちの厚い勉強資料等を見ると、余計に言葉に熱が入った。遠く離れたフランスの田舎町で、日本で起きた出来事を真剣に聞いてくれているという事実にとても勇気づけられた気持だった。

学校の授業以外にも子ども連れの家族が沢山訪れていた。見ていて、本当に良いなあと思うのは、一つ一つの写真について、親が子どもたちに丁寧に説明していること。親子で僕の展示にしっかりと時間をかけて見ていってくれている。

フランスの大手新聞で長年フォトエディターの務める方に改めて、フランス国内で行われているフェスティバルの数について聞く機会があった。大小含めて40はあるわね、と答えが返ってきた。フォトジャーナリズム、ネイチャー、ファインアート、様々なテーマで大きなものから、小さいものまで。ヨーロッパに来ると本当に驚かされることの一つが、自分の仕事への取り組みに対する理解の早さである。自分で何を言うまでもなく、これはこういう意味なのか?と想像を膨らませてくれる。

こんな小さいころから、こうやって、写真に触れられるのは本当に良い環境だなと、見ていて少しうらやましい気持を持ちながら、親子の背中を眺めた。
















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